クリスマスの思い出

クリスマスオーナメント 季節

今から45年前、私は中学1年生でしたが、その年に限って母がやたらとクリスマスには枕元に靴下を用意しなさいと言いました。いくら昔のこととは言え、中学生がサンタクロースを信じているはずもなく、私は最初は母の言葉を受け流していました。

しかし、あまりにもしつこく言うので、もしかすると母は父と何か打ち合わせでもして、本当に私に特別なプレゼントを用意しているのかもしれないと思い始めました。

中学生にもなって枕元に靴下を用意した私

いい年をして恥ずかしいと思いましたが、私は母の言うとおりに靴下を用意して、クリスマスイブの日は眠りにつきました。父は私が物心ついた頃からずっと帰宅は午後11時ごろと言うのが普通だったので、その日も私が寝る頃にはまだ帰宅していませんでした。

そのまま、クリスマスの朝が来て枕元を見ると、靴下が丸く膨れています。期待よりも、訝しむ気持ちで靴下の中を見たところ、ツリーにつるすためのオーナメント、金色の珠が1つだけ入っていました。

朝、母が挨拶もせずに「靴下の中に良いものが入っていたでしょ?」と言うので、金色の珠を見せました。本当にこれに何か意味があるのか、私にはわかりませんでした。珠を見た母は、父のことを怒り出し、結局私は金色の珠に意味があるのか、無いのか聞きそびれてしまいました。

金色の珠の意味はわからずじまい

どうも、毎日夜遅くまで飲み歩いている父に、母がたまには子どもたちにプレゼントをあげて、とお願いしたようです。父は言われたことを安請け合いしますが、それを実行するのはまた別でした。子どもの言うことにも、すぐにいいよ、いいよと返事はしてくれましたが、願いは聞き届けられることがほとんどなかったのです。

母の言葉など忘れて普段どおりに飲みに行ってしまった父は、店先のツリーからオーナメントを失敬して、私の靴下に入れたと後に母は言っていましたが、父に確かめたわけではないので、本当はどうだったのか、わかりません。

その次の年の12月、父は脳出血で倒れて右半身麻痺と言語障害が残ってしまいました。私の記憶はその頃から鮮明になっています。私の大人時代は父が倒れてから始まったように思います。靴下に金色の珠が入っていたクリスマスは私の子ども時代、最後のクリスマスだったのかもしれません。

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