夫の職場には近所に住んでいて、仲良くしている男性がいます。もともと地域の青年団で一緒になり、年齢の差を越えて仲良くしていたのですが、あるとき男性の方から夫の職場に採用してもらえないかと相談があったそうです。
男性は定職についていなかったが
この男性にはそれまで定職がありませんでした。調理師の免許を持っているにもかかわらず、どこに行っても数ヶ月で辞めてしまうのです。かなり長い間、ネットショップで稼いでいたと言います。その間は自宅にこもりきりで、昼夜逆転気味の生活だったようです。
男性の父は既に他界、姉は結婚して自宅を離れており、母親と2人暮らしでした。我が家の次女のような引きこもりとは違うとは言え、見守る母親の気持ちはどんなだっただろう、と考えてしまいます。
自宅が近所なので、ごくたまに彼の母親と会話する機会もありますが、こんなことを言っていました。
私の言うことなんて聞きやしないわ。だって息子はもういい大人なんだもん。それが自分の意志でやっていることだから、私が何か言ったところで変わらない。ケンカするだけ嫌だから、もう私は何も言わないのよ。
そんな男性に夫が、我が家の誰も使っていない畑の話をしたところ、いたく興味を示したのです。使っていない畑を放置していると、雑草などが生えて周りの畑の迷惑になることがあります。我が家としては使ってもらえるだけでありがたい話です。
正直、すぐに音を上げるのではないかと思っていましたが、男性は農業にのめり込み、耕運機などの機械まで揃えたくなったのです。それには資金がいるということで、夫の職場に採用してもらえないかという話になりました。
最初は非常勤の立場だったが
最初男性は農業がメインだと言っており、週の半分ほど、しかも半日の勤務という条件で採用されました。
しかし、農業で一本立ちするのが難しいこと(後継者がいないのに、多額の資金を機械の購入にあてるのはリスクが大きいらしいです)、人手不足から1日勤務をして欲しいという要望が職場の人たちから出たことから、とうとう夫と同じ立場の準社員になるころを決意したのです。
来月から彼はみんなと同じ1日勤務となり、休みも週2日になります。彼の母親はずっと自分が亡くなった後の彼の生活を心配していましたが、これで少しは気が軽くなるのではないでしょうか。
良かったな~、と思いますし、人生はどこでどう変わるかはわからないことを実感できました。
48歳のスタートって…
しかし、彼の年齢はすでに48歳。これを考えると、何だか複雑な気持ちになります。普通の人なら、そろそろ子育てや仕事も一段落して、老後の心配をしているかもしれません。
我が家の娘たちも、いつかは男性のように覚悟を決めて、一歩を踏み出すかもしれないけれど、それが48歳って…まだまだ先でめまいがしそうですが、夫は素直に彼が準社員になることを喜んでいます。
これであいつの給料は俺と同じになる。もう、一人で生きていける。本当に良かった。
夫の給料で私たち4人家族が暮らして来たことを思えば、男性はゆうゆうと生活できるような気がします。
男性だって、ケガや病気をしないとは言い切れないし、毎日の勤務になったら、また嫌になるかもしれないです。しかし、男性が新たな一歩を踏み出したのは本当です。これには素直に敬意を払いたいと思います。
普段は文句ばかり言っている夫が喜んでいることからも、これが本当に素晴らしいことだとわかります。多分夫も娘たちと男性を重ねているのでしょう。ぜひ、現在の仕事を長く続けて、夫の希望になって欲しいと思います。