自分の役割を果たす

生活

今はすっかり自宅に引きこもって暮らしていますが、20代の頃に3年ほど接客業をしていました。切手収集をしている人向けに、国内外の切手を販売していました。

切手を売るとき、愛想以外に必要なもの

古い切手だけでなく、世界各国で発行されたばかりの切手が次々に入荷されていました。切手を集める趣味がなくても、外国の切手はどこかおしゃれで、クリスマスやバレンタインの切手は、興味をそそられるものばかりでした。

今からもう30年も前のことですが、当時でも切手を買いに来るのは、年配の男性が多かったです。若い人は一目でオタクだとわかるような人ばかりでした。だから接客業といっても、普通のスーパーやデパートのような愛想のよさはあまり必要ではありませんでした。

それよりも、注文の切手を早く揃えて客に出すことや、注文の内容を間違えない正確さなどが求められていたと思います。だから自分でもどんな切手が販売されているのかを知っていることがとても大切で、販売員は情報収集を欠かしませんでした。

誰にでも役割がある

そんな世界の中でも、やはり感じのよい販売員に人気が出るのですが、そんな人気者にも苦手なお客様がいるのです。そこで私が不思議だったのは、その苦手とされるお客様が私にとってはごく普通の人であったことです。私は少なくともその人が嫌だと感じたことはありませんでした。こうして販売員の中で、自然にお客様の担当が出来上がり、自分がそこにいてもよいのだという肯定感も覚えるようになりました。

かなり昔の話で、今ほどスピードや効率が重視されていなかったということはあるでしょうが、どんな人間でもじっくりと腰を据えて働くと、その場で役割ができていったのではないかと思っています。多分、効率が悪い、などの理由で人を排除してしまうと、その後の全体の効率はさらに落ちてしまうでしょう。その人が果たしていた、その人だけの役割をする人がいなくなるからです。

仕事を続けるために、大切なのは役割

自分の役割を果たしていると思えば、仕事を続ける助けになるのではないでしょうか。でも、いくらでも代わりがいる、自分でなくてもよい(自分でない方がよい)などと思っていると、仕事のマイナス面ばかりを見てしまい、仕事を続けることができなくなってしまうのだと思います。

仕事を続けられないとき、自分が何をしたいのかわからないことも理由になりますが、役割を見つけられないというのがもっと大きな理由になっていると私は考えています。役割を見つけられれば、愛想がなくても、接客業もできるのです。私がパートの仕事を続けることができなかったのは、役割が見つけられなかったから、なのかもしれません。

切手を販売しているとき、切手を1枚ずつ切り離すのも大切な仕事でした。私は手が遅いのにもかかわらず、接客よりも切った切手を貯めることが大好きでした。ああ、こんなに切った、と自己満足するのがうれしかったのです。どうも私の果たしていた役割は、あってもほんの小さなものだったようです。

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