夫とは年齢が近いせいもあって、ケンカも多いです。穏やかな性格の人なら、驚いてしまうと思います。私の実家の父母もケンカが多かったですが、私たちを見ていると『どうして結婚したんだろう?』と不思議だったようです。
それは母が亡くなる瞬間だった
そんな私がつい最近、結婚してよかったと感じた瞬間がありました。それは今から5年ほど前のことになりますが、私の母が亡くなったときです。夫は早く両親を亡くしており、私たちは夫の祖母と同じ敷地内で暮らしていました。でも、祖母が亡くなるときに、夫は仕事中で臨終には立ち会いませんでした。
でも、私の母が亡くなるとき、夫は前日から泊まり込んでいた私のために、朝早くから私の弟を連れて一緒に病院に来てくれました。そして、臨終にも立ち会ってくれました。母の臨終の際に私は大声でお母さん、と呼びかけました。自分でもなぜだかはわかりませんが、大声で呼んで、手を引っ張れば、少しは長くこの世にいられるとでも思ったのでしょう。
私と母は仲が悪いというほどではありませんでしたが、決して仲がよいわけでもありませんでした。だから自分の行動は自分でも意外でしたが、亡くなる人を目の前にすると、人間は誰でもそんなことをしてしまうのかもしれません。
母が大きく目を見開いて、息を引き取る瞬間に、私の背後からグスンと鼻をすする大きな音が聞こえました。私も弟も涙の1粒もこぼしていないのに、夫が母のために泣いてくれていることがわかった瞬間、私は本当にこの人と結婚してよかったと思いました。私や弟の代わりに泣いてくれてありがとう、とも思いました。
結婚してよかったと思えたことが財産になる
こんなことを思ったのは新婚のときを除くと初めてのことでした。このことで私と夫の関係に何かが変化したかというとそんなことはまったくありません。この後、またいつもと同じ、熟年夫婦のそれほど仲良くない関係が続いているに過ぎません。でも、1度でもそんなことが思えたのなら、それもまた幸せではないでしょうか。
これまでもこれからも、いろいろあると思いますが、たまにはこんなことがあるから、傍目から見ると何で結婚しているんだろうと思うような夫婦が、ずっと一緒にいるのかもしれません。私は母が息を引き取る瞬間に感じた思いを忘れなければ、これからあるであろう困難(例えば夫婦どちらかの病気やケガ、介護など)を乗り切る力になるのではないかと思っています。
ちなみに新婚当時に結婚してよかったと私が思ったのは、それまで一人暮らしをしていたために、『男の人がいるって、物騒じゃなくて安心だ!結婚してよかった~』ということでした。本当になんで私は結婚したんだろうと思われても仕方のない人間ですね…
結婚してよかったと私が思ったことは、夫にはいっていませんし、これからもいいません。本当によかったことは、自分の中にこっそりと持っていたいと思うのです。