老人だけど孤独ではない人

生活

朝から固定電話が鳴りました。もちろんかけて来たのは、80歳の夫の叔母で、いつ来るんだという催促の電話でした。お盆に懐かしい顔が見たいという気持ちはよくわかりますが、この辺りのお盆はいわゆる一般的なお盆休みとはずれています(我が家では7月23,24,25日)。

近所だと思っていても、地域が少し違うとお盆の日も違うのです。夫の勤務先も家からはとても近いのですが、お盆だから休みのわけでもありません。

叔母には裏がないから付き合いやすい

叔母は素直で他意のない人ですが、一度こうしたいと思うと、それを我慢するということができません。最近は特にそれが目立つようになりました。以前の私なら、それを困ったこととして片付けたかもしれません。

しかし、今では困るけれど、それが愛すべき叔母の特徴なのだと思えるようになりました。叔母が夫に愛情を持っていてくれることが、私にもよく伝わってくるからです。

叔母は多分若いときから、人との距離のとり方で悩んだりしなかったと思います。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い、叔母の頭の中はシンプルです。嫌いなのに好きなフリをして自分の気持ちを隠そうとする、こんなことは叔母にはできないし、またしたくもないと思っているはずです。

私のことも大好きな甥っ子の嫁だから、好きだと思っているのでしょう。叔母と付き合うのは、疲れることもありましたが、安心感の方が大きかったです。叔母の言葉には裏がありませんから、あれこれと気を回す必要はなかったからです。

素直な人は孤独にならない?

現在、叔母は好きな人たちに囲まれて、幸せに暮らしていますが、それは叔母が誰にも忖度せずに、素直に生きてきた結果だと思います。叔母の周りの人たちは、ときにはワガママを言う叔母のことを困った人だと思いながらも、『でも、こんなに私たちのことを考えてくれているんだから』と許し、愛してきたのです。

叔母を見ていると、孤独感に悩まされていた、夫の祖母や私の母のことを思わずにはいられません。2人とも、自分がどう思うかよりも、人がどう思うかを気にして、素直な心になれないまま亡くなっていったように思います。

祖母も母も、会いたい相手に、会いたいと言えず、「無理して来なくても良いわ」、「私も人に会うのが億劫だから、そんなに来ないで」などと言ってしまうような人でした。

もしも孤独感から逃れたいと思っているなら、最初は難しいかもしれませんが、叔母のように自分が本当にどうしたいのかを考えるべきではないでしょうか。自分が本当に会いたい人に会う、やりたいことをやるのです。

自分の気持ちに素直になれば後悔しない

相手がどう思うか、は関係ありません。自分がやりたいようにするなら、たとえうまくいかなくても、少なくとも納得はできるはずです。

自分の気持ちを外側に置いてしまって、誰も会いに来てくれない、何もおもしろいことがないと嘆いているから、自分の内側ばかりを見つめてしまい、孤独感が強くなるのかもしれません。また、来なくて良いと言われてしまうと、それを押してまで会いに来てくれる人は、たとえ自分の子どもでも、それほどいないと思います。

本当の愛情があれば会いに来てくれるとは限りません。人間は相手に拒絶されると、傷つきます。自分の気持ちを守るために距離を置こうとするでしょうし、『ちょうど良かった、私も忙しいの』などと理由を作って、会いに行かなくなる可能性が大きいです。実際に私もそうでした。

来られると、気を使うから来ないで、と母に言われると、素直にそのとおりにしていました。自分では気を使わせては悪いと思っていたのです。

素直に生きることが自分も人も救う

私が母の思いなど関係なく、実家を訪れるようになったのは、母が相当具合が悪くなり、入院先を探さなくてはならなくなったときでした。母は私の訪問を喜んで、親戚にも自慢していたそうです。

もっと早くから母が自分の気持ちに素直になってくれていたら、私と母には楽しい時間があったのかもしれないと思います。それが今でも残念です。

残念ながら私の記憶の中の母は、病気で弱った姿ばかりになってしまいました。自分に素直に生きることは、自分の孤独感を解消するだけでなく、周りの人の孤独感まで解消できるのではないでしょうか。

素直になることで人が困っても良いのだと私は思います。完璧にすべてが良い人よりも、困った点を持っている人の方が、きっと遠慮なく付き合ってもらえるはずです。愛すべき困ったちゃんは孤独にならない、叔母はそんなことを教えてくれているようです。

まあ、人間、亡くなるときは一人になりますが、そのときまで心温まる人生を送った人は、きっと良い旅立ちができるのだと思います。

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