捨てるのに困ったときに助けてくれた母

実家

現在は必要ないと思えば、大抵のものは捨てられるようになった私ですが、かつては違いました。他人からの贈り物だと、やはり贈ってくれた相手の気持ちを無駄にするようで、どんなに自分には必要ないものであっても、捨てるのに躊躇したものです。

叔母からのプレゼントに困った私

結婚してしばらくは、よく夫の叔母が私に服をプレゼントしてくれました。このブログにもよく登場する叔母です。

娘のいない叔母は、私には不似合いな可愛らしいワンピースを買ってきたかと思うと、どう見ても年配の女性向けのモコモコのカーディガンを買ってきたりしました。

夫である叔父は何度も、着るものはその人の好みがあるのだから止めろと忠告してくれたようですが、叔母は自由な人で、自分が贈りたいから贈るのだ、と言って聞かなかったそうです。

そのモコモコのカーディガンを見て、私は大変困ってしまいました。これはたとえ年齢を重ねても、私は着ることがないだろうと思えたのです。

かと言って、結婚してそれほど時間が経っていなかった私には、そのカーディガンをどうすれば良いのかもわかりませんでした。つまり途方に暮れてしまったのです。

実家の母が助け舟を出してくれた

そんなとき、私は実家の母にカーディガンをもらって困っていると話をしました。母はそのカーディガンを見せてごらん、と言いました。そしてこう言ったのです。

確かにこれは年配の人向けのデザインだね。でも、とても質が良いし、暖かいと思うよ。きっとお前が冷え性だから、叔母さんはこれを選んでくれたんだろう。

お前がこれを着たいと思う年になるまで、お母さんがこれを預かっておくよ。その前に何回かお母さんが着てみようかな。

捨てるわけにもいかない、同年代の人にはもらってもらえなさそうなカーディガンをどうしたら良いのかと悩んでいた私は、母の言葉がありがたく、言われるがままにカーディガンを渡しました。

もし、カーディガンについて何か言われても、母が気に入って、持っていってしまったと言えるため、叔母の顔も潰さないで済むと思い、本当に私は助かったと思ったのです。

その後、私は母がそのカーディガンを着ているところを見たことがなく、てっきり母も困って処分してしまったのだろうと思っていました。

母はずっとカーディガンを持っていた

ところが2015年に母が亡くなり、せめて衣類だけでも私が整理しようと、実家に行ったところ、そのカーディガンが箱に入ったまま大切に保管してあったのです。私が結婚したのは1991年ですから、4半世紀近く母はカーディガンを預かっていてくれたことになります。

もう良いだろう、私はそう思って、母の衣類とともにカーディガンを処分しました。母はどちらかと言うと簡単に物を捨てる人ではなく、狭い団地の一室には私や弟が幼児の頃に使っていたものまでとってありました。

それを疎ましく思ったこともありましたが、物をとっておくという行為で、私のことを助けてくれたんだな、と思うと、なんだか暖かな気持ちになりました。

それと同時に、どんな物に対してでも、もう良いだろうと思える瞬間が来ることもわかりました。その物に対して、気が済むと言えば良いのでしょうか。どんなにその物に思い入れがあるとしても、気が済む瞬間を待てば捨てられるし、反対に気が済まないのに捨ててしまえば後悔が残るでしょう。

現に私はカーディガンを捨てましたが、後悔はありません。しかし、今でも着るものは人にあげない方が良いと思っていることに変わりはありません。これは私の中に信条として残っています。

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