実家は売れるのか?

実家

私の実家は現在住んでいる場所から、車で30分ほどで行けます。もう、築40年以上の古い団地ですが、新築時に父と母が苦労して購入しました。時は流れ、今から16年前に父、6年前に母が亡くなり、実家には独身の弟が残りました。

実家は弟のために残す

母は自分が死んだ後も、弟はずっと実家で暮らすと考えていたようで、私は母から、父が亡くなってすぐに相続放棄をするように言われました。

私はすでに結婚して、夫の実家に住んでいたわけですから、母にとっては弟の行く末だけが心配だったのでしょう。

弟にはここしか住むところがないんだから、ゆみこねこは我慢してね。

母にこう言われたら、私は相続放棄をするしかありませんでした。当時すでに、古い団地は値崩れを起こしており、実家の価値はほとんどなくなっていましたから、特別損をしたとも思いませんでした。

リフォームまでしたけど

母は自分が亡くなる前に、キッチンと風呂場のリフォームまで済ませていました。「弟は、自分ではこんなこと、できないだろうから」母はそう言っていました。

年をとってから、多くの人が出入りするリフォームをするのは大変だったでしょうが(キッチンのリフォーム中は家に居場所がないと言っていました)、母は自分ができることは、すべて済ませておこうとしていたようでした。

しかし、母の死後、弟は思いがけなく結婚することになりました。2人で暮らすには実家では古すぎるし、通勤にも不便だということになり、売却することになってしまったのです。

ところが、築年数が古いこと、駅から遠いこと、駐車場が離れていることなどで、実家はまったく売れる気配がありません。母は自分にできる精一杯のリフォームをしましたが、家全体を見れば、古くて汚いというのが、本当のところです。

家族を守るために家を欲しがった母

実家を買うときに、一番熱心だったのは母でした。何かあったときに、持ち家でないと心細いとよく言っていました。父は「それを聞いて、何かってなんだよ~」と言っていましたが、実家を購入して4年後に病気で倒れて働けなくなってしまいました。

団地に引っ越すまで、実家は小さな家を借りて生活していました。母はいくら家賃を払っても、自分たちのものにならない借家に住み続けることはできないと考え、それなら多少、不便な場所に住むことになっても、自分たちの家を持ちたいと願ったのです。

実際に父が倒れたとき、持ち家で良かったと母は言っていました。ローンを払い続ける苦労はあっても、誰かに追い出される心配はありません。父が倒れた43年前、一家の主が働けなくなるというのは、今よりももっと大変なことでした。

借家に住んでいたら、家賃を払い続けられないと見なされ、出ていかなければならなかったかもしれません。私たちは持ち家があったおかげで、住む場所の心配をしないで済んだと言えるのです。

母は無理をしない方が良かったと思う

亡くなる直前のリフォームは、母が自分の思いがこもった家を良い状態で弟に残そうとした結果だったように思います。しかし、結果として実家は売れず、弟の重荷になっているように見えます。

今、親の立場で自分の今住んでいるところが、死後はどうなるのかを心配している人もたくさんいると思います。

しかし、自分の死後、状況はどう変わるのかわかりません。実際に弟の状況も思わぬ方向へと変化しました。終活だからと無理をしなくても、良かったのではないかというのが私の素直な感想です。母は最後まで生活の心配をしながら、つましく暮らしていました。

あのリフォームに使ったお金を自分のために使えたなら、母の生活はもう少し潤いのあるものになったのに、と思わずにはいられません。

こうなると、実家が少しでも早く売れて、母の思いが誰かの役に立ってくれることを願うだけです。弟も困っているんじゃないかと思います。私は相続放棄をしたため、どこか他人事のような感じですから…

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