大河ドラマ「いだてん」最終回を見て

テレビ

とうとう昨日、最終回になってしまいました。1年間、休まずに見たドラマなので、何だか寂しくなっています。

心に残ったシーン

私が心に残ったシーンは、東京オリンピックの開会式の客席で、バンザイの嵐が起こる場面でした。俳優さんたちによるバンザイのシーンと、実際のオリンピックの記録映像に残っているシーンが組み合わされていましたが、それがとても効果的だったのではないかと思っています。

俳優さんたちだけでは、わざとらしいだけだったし、記録映像だけではそのバンザイに隠れた国民の思いまでは伝わらなかったでしょう。かつて学徒動員でたくさんの学生たちを戦地に送り出した場所で、今度はやっと平和の祭典を行うことができたという喜びが爆発して客席のバンザイになったということが、とてもよく伝わってきて、感動してしまいました。

真実よりも真実らしいドラマ

記録だけではただの過去になってしまうところを、「いだてん」では、熱と色を与えて、今現在のこととして見せてくれたように思います。過去の事実にたくみに創作を混ぜて、熱と色を与えたのは、脚本の宮藤官九郎さんの術といえるのではないでしょうか。まんまとその術にはめられて、あっという間に1年が終わってしまいました。

同じバンザイでも、先日の天皇陛下の即位を祝う国民の祭典での万歳三唱には、私は薄ら寒い感じを受けました。新聞の投書にも、まるで戦前のようで不安になった、などの意見が掲載されていました。

誰かのためにさせられる万歳には、自由も喜びもないような気がしますが、「いだてん」のおかげで、喜びが爆発して自然にやってしまうバンザイは見ていて気持ちがよいものだとわかりました。

「いだてん」を見てよかった

もし「いだてん」を見ていなかったら、私はオリンピックの客席でのバンザイを見ても、またバンザイをしている、としか思わなかったでしょう(昔の大人は転勤や昇進、結婚など、何かあるとすぐにバンザイをしていました)。私の父や母の年代(それ以上も含む)の人たちの気持ちを少しでも思いやるきっかけになりましたし、自分が生まれた頃に思いをはせることができました。
これは、私の年齢では中々できることではないので、本当によかったと思っています。

ドラマの序盤では落語とオリンピックに一体何のつながりがあるのかと思っていましたが、最後にはかっちりとパズルのピースがはまったようなすっきりとした感覚を味わうことができました。落語とオリンピックが、古今亭志ん生と金栗四三と田畑政治が、すべて結びついているとは、本当によくできた話です。

「いだてん」を見ていると、本当は世の中に関係のないことなんてなくて、すべては結びついているのではないか、という不思議な感覚が芽生えて来ました。

うまく騙されて、うれしくなるドラマだった

実は私はドラマの中で、古今亭志ん生の弟子になった五厘が手にしていた「なめくじ艦隊」という伝記は、宮藤さんの創作だと思っていました。あれが本屋に並んでいるのを見たときには、驚きました。ドラマを見て、何が事実で、何が創作かを考えるのも野暮ですが、「いだてん」はまさに虚実がないまぜだったのではないでしょうか。うまく騙されると、人間は楽しくなるのです。

最近はいろいろな詐欺事件が多発しています。これも人を騙すということですが、騙すなら宮藤さんのようにキレイに、愉快にやらなければいけない、そんなことまで考えてしまうドラマでした。実は騙すことにもセンスが必要なのです。センスのある人ばかりなら、世の中が平和で楽しくなるでしょう。とにかく「いだてん」のおかげで、1年の終わりによい後味が残ってうれしいです。

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