わざわざ弟のために大家さんに挨拶に行き、石油ストーブも預かってあげよう(集合住宅では使えないところが多いためです)と休日返上で出かけて行った夫でしたが、少々がっかりして帰って来ました。引っ越しの準備がまるで進んでいないと言うのです。
弟が変わっていないことを嘆く夫だが
元気な頃から買い物依存の傾向が強かった弟は今でも一人暮らしの部屋に呆れるほどの洋服や靴を溜め込んでいます。
今弟が住んでいる部屋は職場のすぐ近くにあり、借り上げ社宅となっているマンションにあります。職場復帰ができないときは、遅かれ早かれ引っ越しをしなくてはなりませんでした。だから本人は引っ越すときには、処分をすると言っていました。
夫は物が少ないなら自分1人が手伝って引っ越しを終わらせるくらいの気持ちでいたようです。確かに経済的に逼迫している弟が、着る機会のない洋服のために高い費用をかけて引っ越しをするのはもったいない話です。
弟が今のような状態になった大きな原因は買い物のしすぎだと私も夫も考えています。この引っ越しを良い機会にして物への執着を断ち切り、シンプルな暮らしをして欲しいと思うのは当然のことではないでしょうか。
しかし、昨日見たところ、洋服などを処分した形跡はなく、荷造りもまったく進んでいない状態だったそうです。夫ががっかりするのもわかります。しかし、弟の立場になるとどうでしょうか。
弟の立場になると…
弟は自分ができる範囲で物を処分したのかもしれません。処分するとは言ったけれど、彼はすべてを処分するなどとは言っていないのです。弟の立場になると、夫は自分が納得できるくらい物が減っていないからと、勝手にがっかりしていると感じられるのではないでしょうか。
夫はきっと弟に期待しているのだと思います。自分が手を貸すのだから、弟にも変わって欲しい、もう心配をさせないで欲しいと考えているのでしょう。それは私にもよく分かります。私も弟のことで思い煩うのは嫌です。
けれどこうも思うのです。結果として弟は私たちを思い煩わせましたが、それは弟が頼んだことではありません。勝手に私たちがやったことです。
金銭的な負担は確かにありましたが、それは本気になって返却を迫ることができます。多少こちらが多く負担することになっても、それは病にかかった弟への見舞いだと思えば良いことです。それ以外のことで弟が私たちに強いたことは何1つありません。
それなのに、夫は勝手にあれもやる、これもやってやると言い、結果として弟が変わらないとがっかりしているのです。そのがっかりした気持ちは怒りにもつながり、一緒にいる私は嫌な気持ちになります。そしてそれは弟にも伝わっているのではないかと思います。
私はそんなことになるくらいなら、少し距離をとって弟にいろいろとやってもらえば良いと思うのです。何しろ、弟自身のことなのですから。いろいろとしてあげるのは、手を貸してと言ってきたときでも遅くはないでしょう。
ちょっと心配
昨夜疲れてテレビの前でゴロゴロしていた夫に弟が電話をかけてきました。内容は大したことではありません。引っ越ししたらガスはどうしたら良いだろうという内容です。そんなことは弟も自分で調べれば良いということはわかっているはずです。それでも電話でわざわざそんなことを言ってくるのは、弟が不安だという証拠だと感じられました。
しかし、夫の顔は疲れ切っており、うんざりしているように見えました。弟が夫に求めているのは、手伝いや説教ではなく不安なときに話を聞くことのようでした。けれど、夫はそれを拒否「悪いけれど、俺にはわからない」と言って話を終わりにしてしまいました。
このままではどこまで行っても、夫と弟は平行線なのかもしれません。どちらにもそれは不幸ですが、私が言うことは夫にとって意味をなしません。私が言うことは、もう弟と関わるな、放っておけと聞こえるようですから、私はただ見ているだけになります。
ただ、人の話を黙って聞くことほど難しいことはありません。人間つい、何かアドバイスをしたり、意見を言ったりしたくなります。私はかつての同級生とのお付き合いでそれを嫌と言うほど思い知りました。
自分は無力で話を聞くことも満足にできないのですから、助けてあげるなんてできません。できないことに下手に手を出さない方が良いのです。夫にそれを言っても「兄弟だから仕方がない」と言うばかりなのです。