昨年の夏、我が家の近所に住んでいた遠縁の女性が突然亡くなりました。
先日は一周忌が執り行われて、時が過ぎる速さに驚いたのです。一周忌の案内状を受け取ったときに、私と夫は「暑さの盛りですので、平服でおいでください」の一言が気になりました。
法事での平服って?
普通なら一周忌には喪服や礼服を着用します。女性の喪服には夏に適した涼し気なものがありますが、私は男性が着る礼服で夏に対応しているものを見たことがありません。
喪服や礼服を着ないで良いなら、それに越したことはないでしょう。そうすると、一体何を着て一周忌に出席すれば良いのでしょうか。夫も最初は「はっきり言って、暑くても礼服を着ちゃった方が俺はラクだな」と言っていました。
まず平服の意味を調べることから始めました。法事に平服で来て良いというときは、平服は喪服でなくて良いというだけの意味のようです。喪服や礼服でなく、通常のスーツで良いということなのでしょう。
ただ、今年の夏は観測史上最高の暑さと言われています。スーツを着てネクタイを締めるのでは、喪服や礼服を着るのと変わりはありません。
そこで夫は春・夏用のスーツのスラックスと半袖のボタンダウンシャツを着用することにしました。ネクタイはなしです。何を着るか聞いてみようかな…とも言っていましたが、最終的には「俺なりに平服を解釈した結果だから、これでいいや。自分は自分だもんな」と納得していたようです。
実際はどうだったのか?
実際に一周忌に出席してみると、様々な服装の人がいたそうです。夫のような少しラフな服装もいれば、喪服のような黒っぽい服装も見たそうです。「まあ、人それぞれだしな。それにもう一周忌だからいいんだよ」と夫は言っていました。
絶対にこうでなくてはならない、とマナーにがんじがらめになるよりは、様々な服装の人たちがお互いを認めあえる方が良いと私も思います。少し違っても、注意されない、排除されないと思えば、どんな集まりにも進んで参加しようと思えます。
夫は早くに親が亡くなったため、こうした冠婚葬祭に関しては、かなり気合が入っていました。決して親が健在の家に引けをとらないようにと、ことさらにマナーを守ろうとしていたのです。我が家で法事をやるときは、いつも皆と同じようにしなければと、ピリピリしていたように思います。
「人それぞれだしな」と言う夫を見て、ずいぶんと成長したんだな(上から目線…)と思った私です。
平服は軽やかさの象徴
今回一周忌を終えた遠縁の女性の家は、我が家の本家でした。明治の始めのころ、本家の息子の一人がもう断絶しそうになっていた家に養子に入ったのが、現在の我が家の始まりです。養子に入って名字を継いでくれれば、家屋敷はすべて譲るという条件だったそうです。
昔の農村は農地を守るために、お互いに近いところから嫁をもらい合っていたため、夫の祖父母の代までは密接な親戚関係がありましたが、遠縁の女性は一人娘でした。残されたのはお婿さんで、夫とは血の繋がりはありません。
これで親戚としてのお付き合いは一段落するでしょう。女性には息子がいて、同じ敷地内に暮らしていますが、その息子さんと夫はかろうじて顔を知っているくらいです。この先お付き合いが続くとは思えません。
結婚当初は大変だと思った親戚のお付き合いですが、こうして軽くなっていくこともあるんだなと思うと、なんだか感慨深いです。法事に平服で出席するって、この軽くなっていくことの象徴なのかもしれません。