昨日の朝、まだ9時前に玄関のインターホンが鳴りました。ドアを開けると立っていたのはご近所に住む男性。昨年我が家の遠縁にあたる女性が突然亡くなりましたが、彼はその夫(女性は一人娘だったので夫は婿入りをしたのです。女性の父親とも養子縁組をしたそうです)です。
男性の用件は…
男性の年齢は私の20歳上で、今年80歳になります。彼は自宅で育てているカンパニュラ(ホタルブクロの仲間だそうです)を届けてくれたのです。亡くなるまでは毎年女性が我が家に届けてくれました。私が一度、女性の家に飾ってあるカンパニュラをきれいだと言ったのを覚えていてくれたのです。
昨年の5月、やはり朝早い時間に切ったばかりのカンパニュラを届けてもらって、お礼を言ったのが女性と会話をした最後になってしまいました。
女性の家に飾ってあったカンパニュラは確かにきれいだったのですが、自分でいざ飾るとなるとなかなかうまくいきません。その上私は、茎に毛が生えていて扱いにくい…などと思っていました。
いざ女性が亡くなってしまうと、もっとちゃんとお礼を言っておけば良かった、たまにはお返しをしたら良かったと後悔していたのです。
まさか、男性が我が家にカンパニュラを持っていくことを妻から引き継いだわけではないでしょう。それでも、昨年と同じようにカンパニュラを受け取ると、何だか女性の気配を感じるような気がして、懐かしい気持ちになりました。
亡くなったら終わりではなかった
聞けば男性は女性がずっと利用していた「ダスキン」のモップとダスターを、引き続き利用しているということです。ダスキンを毎月届けてくれる人が男性だけでは使わないだろうと、「解約しますか?」と申し出ましたが、男性はそれを断ったそうです。
妻が亡くなっても、妻が居たときと同じように俺が掃除をするつもりです。だから、ダスキンはこのまま利用します。
女性が生きていた気配を消したくない、男性はそう思ったに違いありません。実際にお盆に訪ねたとき、家の中は女性が生きていたときのまま、きちんと片付き掃除が行き届いていました。何だか奥からひょっこりと女性が顔を出しそうだと思ったものです。
1年ぶりのカンパニュラを見て、女性はまだ亡くなってはいなかったんだな、と思いました。これから先、男性が亡くなり、我が家にカンパニュラを持ってくる人がいなくなったとき、本当に女性は亡くなるのかもしれません。
男性は膝と腰が悪いものの、内臓にはどこも悪いところがないそうです。先日膝の手術のために入院していましたが、それが生まれて初めての入院だと言っていました。まだまだ我が家にはカンパニュラが届きそうです。
私自身はこんなふうに気配を残すことができるでしょうか。ちょっと無理かもしれないな~と思っています。