相棒が始まると、今年も秋が来るな、と思って季節を感じているのは私だけではないでしょう。
毎回、面白くてたまらない、というドラマではありませんが、落ち着いて見るのにはちょうどよい話です。面白すぎると、睡眠の妨げになるような気もしますし、ちょっとオー・ヘンリーの短編みたいで、相棒は秋の夜長にピッタリだと思います。
冠城亘の元カノが出てくるのはお約束?
前回11月6日放送の「さらば愛しき人よ」では、主人公・杉下右京の相棒、冠城亘の元恋人が登場しました。覆面詩人として活躍していた彼女には前科があり、今また同居していた友人を殺害して、大金を奪って逃亡した疑いがかけられ、警察が捜査に乗り出すことになりました。
どうしても彼女の犯行だと思えない冠城亘は独自にその足取りを追って行き、彼の知らない彼女の姿が次々と明らかにされます。
一方杉下右京は、頑なに冠城亘からの電話に出ようとしない彼女の態度にある疑いを抱きます。
結局、杉下右京の疑いの通りに、彼女は行きつけだったコーヒー店のマスターに、すでに殺害されていました。身勝手な愛情(過去から解き放つと称して、前科を暴露しようとしていた)を押し付けてきたマスターを拒絶したことから、殺害され遺体は遺棄されました。
佐藤江梨子さんの静の演技
最後のシーンでは、遺体を詰めたスーツケースが警察に掘り起こされ、開けられます。
その中に体を不自然に折り曲げられた彼女が入っている様子が、画面に映るのですが、これが冠城亘が久しぶりに彼女に対面するシーンとなります。
辛そうな冠城亘の顔がとても心に残りますが、それよりも心に残るのは目を閉じた彼女の美しい顔です。ちょっと言葉にならない、思わず息を潜めて見入ってしまうほどの魅力がありました。
彼女を演じたのは佐藤江梨子さんです。目を閉じたその顔が、動いて演技をしていたときの何倍も魅力がある、と思ったのは私だけでしょうか。黙って目を閉じているのに、悲しい思い、辛い思いをたくさん抱えていることがわかるような顔をしていました。
彼女を殺害したコーヒー店のマスターが薄ら笑ったのは、スーツケースの中の美しい彼女の顔を見て満足したからではないかと思ってしまいました。
今期も相棒を楽しみたい
この演出が安っぽいサスペンスドラマのようで、今ひとつだったという感想もあるようですが、私はそうは思いません。遺体が詰められたスーツケースを開ける前に、警察官が一斉に手を合わせるシーンも、まるで何かの儀式のようで、ドラマのシーンというよりも舞台芸術のようだと感じました。
相棒というドラマは、後からジワジワと効いてくるような気がします。
自分の中で何回も反芻して楽しめて、お得です。何回も見ていると、ハズレがあるのはご愛嬌でしょう。そのハズレも誰かにとっては、アタリ!なのかもしれません。
ハズレがあっても、今やベテランの域に達している、脇役のみなさんを見ているだけで楽しめます。伊丹刑事や芹沢刑事のことは、大好きな人が多いですよね。
また春になってお別れするまで、たくさん楽しませてもらおうと思っています。