子どもから目を離さないことは本当に可能か?

やることは育児だけではないから 生活

子どもが大好きなパンを与えていたら、保護者が目を離したすきに自分でたくさん口に入れてしまい、窒息する事故が起きました。

不幸にも1人の子どもが亡くなったために、パンのパッケージに小さな子には小さく切って食べるようにと注意喚起を促すメッセージを入れたり、パン自体を改良して喉に詰まりにくくするなど、様々な対応がとられることになりました。

納得できないコメント

しかし、今朝の新聞によれば、子どもを亡くした親に対する批判のコメントがSNSには多数寄せられているそうです。その中でも多かったのが、親が目を離さなかったらこのような事故は起こらなかったというものです。

SNSにコメントを寄せた人は、親が自分の不手際を棚に上げて、責任をパンメーカーに転嫁しているとでも言いたいのでしょうか。

親が子どもに何か食品を与えるとき、それが危険だと思って与えることはまずありません。子どもが好き、よく食べてくれる、自分も美味しいと知っているような食品を与えるはずです。

中には空腹で泣き叫ぶ子どもにとりあえずすぐに食べられるパンや果物を与えて、その間にキッチンからメインの料理を取ってくるということもあるでしょう。

また、パンを食べさせていて飲み物がないことに気が付き、その場を離れることがあるかもしれません。子どもが食品を喉に詰まらせるのは、そんなわずかな時間です。普段の生活の中ではやらなくてはならないことが山積みしており、何かをしながら別の家事をするのが当然のようになっています。

多分、多くの子育て経験者は目を離したという自覚もないまま、子どもから目を離しているのです。コメントを寄せた方の中には、私は目を離したりはしていなかったと思い、つい強いコメントをしてしまった人がいると思います。しかし、自分だけは別だということはありえないと私は思っています。

私にも経験がある

実は私自身にも子どもが窒息した経験があります。しかも長女も次女もです。長女はベビーチェアに座らせて8等分に切ったりんごを食べていました。そうやって少しずつかじらせていると噛む練習になると、育児雑誌で読んだのです。

ところが長女はりんごを思いの外大きくかじってしまい、そのまま喉に詰まらせてしまったのです。私は喜んでりんごをかじっている長女を見て、もっとあげようと残りのりんごを取りにキッチンに行ったその瞬間のことでした。

次女は1歳になる前から、長女がなめていたこともあり、アメが大好きでした。いつもアメを欲しがり、その日もアメを舐めながらゴロゴロしていたので、私が「そんなことをしていると、喉に詰まるよ」と声をかけたところ、本当に喉に詰まってしまいました。

私としてはそんなに子どもから目を離したという自覚はありません。これが駄目なら家で赤ちゃんの面倒を見ながら家事はできないことになってしまうと思います。しかし、大事には至らなかったとは言え、実際に自分の子どもが窒息しかけています。

事故を報道する目的は?

今回の窒息事故が報道されたことで、パンを与えるときは気をつけようと思った保護者が多かったことでしょう。みんなが気をつけようと思うことで、事故は減っていくはずです。だから、報道された甲斐はあったのだと思います。

このような事故が報道されるのは、事故を減らすためであって、決して当事者を責めるためではないはずです。私たちはそこのところを、間違わないようにしなくてはいけないと思います。

娘たちが窒息しかけたとき、私が取った行動は娘の足首をつかみ、逆さ吊りにして振る、という大胆なものでした。これでりんごもアメもコロンと喉から出てきましたが、小さい乳幼児だからできたことだと思います。

私の場合はりんごやアメだったので喉から取り出しやすかったのです。もしもパンだったら水分を吸って膨らみ、容易には取れなかったと思います。

2人とも喉にものが詰まったときには、目を白黒させて苦しみ、とても怖かったです。多分あのときの私にあれ以上のことはできなかったでしょう。お子さんを亡くした方は、目の前で苦しむ子どもを見て、どんなに辛かったことかと思います。

もっと不幸な事故で悲しむ親子を減らすために、正しい報道がされるべきだし、それに対して私たちも正しい反応をするべきです。

自分は絶対にそんなことをしない、ありえないではなく、自分にも関係あるかも、自分もやってしまうかも、という思いでいたら、悲しみの中にいる保護者の心を抉るようなコメントは決して発信できないと思うのです。

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