玄関の鍵をかけていますか?その2

生活

私がまだ幼かった、今から50年前に東京都国立市に住んでいたことがありました。駅から徒歩10分足らずでしたが、当時の国立は静かな郊外といった雰囲気でした。父母と私、3つ年下の弟の4人が住んでいたのは、小さな平屋の借家でした。

枕元に座るのは幽霊だけではなかった

50年前にはアルミサッシはまだ普及しておらず、窓の鍵はついていましたが、外から強い力で揺すると外れてしまうような代物でした。そんなある日、まだ30代だった母は家に自分一人だったために、昼寝をしていました。私よりは用心深かった母は玄関の鍵はちゃんと閉めていましたが、窓のことまでは気が回りませんでした。

昼寝をしていた母は、ふと違和感を覚えて目を覚ましました。枕元に見知らぬスーツ姿の男性がきちんと座っていたそうです。後にそれを聞いた私はてっきり心霊現象の話かと思いましたが、それは生きた人間の男性で保険会社の営業マンだと自己紹介までしたそうです。もちろん黙って家に入られたのですから、母もはいそうですか、と納得したわけではありませんでした。「一体何をしているんですか!?」と問い詰めたそうです。

営業マン
営業マン

お声をかけたのですが、よくお休みになっていらっしゃったので、お目覚めになるのをお待ちしておりました。

彼はこう答えたそうです。家には小さな庭に出るための、掃き出し窓がついており、近所の人がちょっと縁側から声をかけてくることもありました。彼もそこから入ってきたのでしょう。結局、保険に興味はないからとお引取りを願って、彼はおとなしく出ていきました。

実際の体験で、戸締まりに気を使うように

母は決して騒ぎ立てませんでしたが、それは母が冷静で肝が座っていたからではなく、相手を刺激して事件に発展させたくないという一心からでした。確かに叫んだりしたら、入ってきた人は大事になるのを恐れて、相手の口を塞ぎたくもなるかもしれません。

平屋に住んでいたときは、玄関から知らない人が入ってきても、いくらでも逃げ道があると母は考えていました。だから玄関の鍵には気を付けても、後はそれほど神経を使わなかったようです。でも、実際に他人に家の中に入り込まれたときの恐ろしさと気持ち悪さを体験すると、戸締まりをいくらしてもし過ぎることはないのだと実感したようです。

安心な場所は簡単に手に入らない

その後我が家は団地に引っ越しました。それまでは経験したことのなかった2階での暮らしになり、これなら玄関の鍵さえ閉めれば、誰かが窓から入ってくる心配はないと考えるようになりました。

でも、これは甘かったです。5階に住んでいても不審者が入って来たという話を団地内で何度も聞きました。実際に私の実家でも、夜中に干してあった洗濯物を盗まれたことがありました。

自分の家は心休まる安全な場所であって欲しいと誰もが願っていますが、それは自分が細心の注意を払ってやっと手に入るもののようです。

母から、こんな経験を十分に聞いていたのに、この20年ほどは開けっ放しの生活をしていて(昨日の記事に書きました)、恥ずかしい気持ちです。誰でもつい、うちは大丈夫と都合よく考えてしまいますが、人間は1度嫌な経験をするとなかなか立ち直れないようです。お互いに気を付けたいですね。

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