個人経営のケーキ屋さん

生活

我が家の近所にあるケーキ屋さんは不二家かシャトレーゼでした。それでクリスマスも誕生日も不便はなかったし、いつも安定した商品が手に入るので良いと思っていました。

こんなケーキ屋さんは久しぶり

でも、先日次女の誕生日のケーキを買いに行ったのは、個人経営のお店でした。不二家やシャトレーゼよりも後にできた小さなお店です。次女が気になる、と言わなければわざわざ行かなかったかもしれません。

実際にお店に入るときも少し勇気が要りました。客が私1人だったのです。店に入ると、ケースに色とりどりのケーキが並んでいて、目移りしてしまいました。秋の果物をふんだんに使ったタルトが目をひきました。選びながらも、今までのケーキ屋さんとは違うのがよくわかりました。

今までのケーキ屋さんとの違い

今まで行っていたケーキ屋さんとの違いは、時間の流れと香りでした。年配の女性が接客をしてくれましたが、とにかく何事もゆっくりで丁寧でした。私もいい加減ゆっくりだと言われますが、その私がゆっくりだな~、と感心するほどでした。

いつもケーキを選ぶとき、店員さんを待たせてはいけない、と焦るような気持ちで選んで注文していましたが、ここまでゆっくりしてもらえると、こちらもゆっくり注文できると思いました。

考えてみればケーキを買って食べようというときまでセカセカしている必要はないわけです。『あれ、私は何を急いでいたんだろう?』と我に帰るような気持ちになりました。

それに美しいケーキを丁寧にそっと扱っているのですから、動作はゆっくりになるはずです。これから自分が食べる予定のケーキです。丁寧に扱ってもらって嫌な気持ちになる人はいないでしょう。

誰かの手作りで元気になれそう

それから香りですが、これは店に入った瞬間に『今までとは違う!』と強く感じました。店いっぱいに甘い香りが漂っていたのです。

よく家庭でお菓子を焼くと家中に甘い香りが漂ってしばらくはとれません。それと同じような香りが漂っていたのですが、私が今まで行っていたケーキ屋さんではそんな香りを感じたことはありませんでした。

工場で作ったのではない、その場で誰かがケーキをせっせと焼いているのがわかって、何だか嬉しくなりました。誰かの心のこもったケーキを食べたら、元気になれそうです。

マスクをしていても、ハッキリとわかる甘い香りは個人経営のケーキ屋さんならではでしょうか。もしかすると、私が子どもの頃のケーキ屋さんはみんなこんな感じだったのかもしれません。

もう40年以上前なので記憶がハッキリしませんが、子どもの頃にたぬきケーキ(一時期リバイバルヒットをしていましたよね)やサバランを買ってもらったことがかすかに思い出せます。

どんなケーキ屋さんに言っても幸せな気持ちになれますが、香りが記憶を呼び覚ますことで、より一層子どもの頃の幸せな気持ちに浸れたような気がします。

また食べられますように

心配なのは、私がいる間他のお客さんはまったくいなかったことです。コロナ禍のせいもあるでしょうが、ケースの中のケーキの華やかさと店内の寂しさは釣り合わないように思われました。これで経営が成り立つのでしょうか。ぜひ、またこのケーキ屋さんのケーキが食べたいと願ってやみません。

店の外に出た途端に、一気に時間の流れがいつもと同じになり、セカセカと帰って来ました(雨が降りそうだったのです)。

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