引きこもりという言葉はいつ頃から言われ出したのでしょうか。今8050問題などと言っていますから、私よりも少し年下の人たちが若い頃に問題が表面化したのかもしれません。
その人に会ったことはないけれど
しかし、私は今考えると、あれが引きこもりだったのかと思う人がいます。私は現在56歳ですが、その人は私よりも年上の女性でもうすぐ60歳のはずです。
私はその人に直接会ったことがあるわけではありません。その人は私の母の同級生の娘さんです。私と同い年の弟がいましたが、中学生のときに突然亡くなりました。入浴中に風呂場で亡くなっていたということで、死因はよくわからなかったと聞いています。
当時(昭和50年代です)、弟さんが通っていた中学校では失神ゲーム(記憶を頼りに書いていますが、間違っているかもしれません)という遊びが流行っていました。息を止めたり、首を締めたりして失神寸前まで我慢ができるか競うゲームだったと思います。
中学生の息子が突然亡くなるのですから、母の同級生の家庭は大変な悲しみだったはずです。その悲しみを癒やすために、同級生夫婦はもう1人息子を産むことを考えたようです。
見事に男の子が産まれ、亡くなった弟さんと同じ名前がつけられたのです。その後、娘さんの様子がおかしくなりました。家の外に出られなくなり、閉じこもったままになりました。
昔は引きこもりが不思議だった
弟さんが亡くなったのは中学生のときで、その後5~6年経っても状況は変わらなかったようです。娘さんはお母さんが外出するのをとても嫌がり、母の同級生は久しぶりに会っても、娘さんのことばかり気にしていたそうです。
当時の私は、変わったこともあるんだな~、外に出られないってどういうことだろう、と不思議で仕方がありませんでした。
当時の私は学校に行きたくないと思うことは度々ありましたが、家にいるのも嫌でした。だから1人でアチコチをふらついていました。素敵なことや面白いことはすべて家の外にあると思っていたのです。
ただ、弟さんが亡くなったのに、新たにまた赤ちゃんが産まれるというのも(随分年の離れた姉弟になります)、かなり刺激が強いと思ったので、ショックが強かったのかもしれないとは考えました。
引きこもりのきっかけがあった
ここ数年、次女が引きこもりの状態になって、久しぶりにその娘さんのことを思い出したのです。その後はどうしているのか、母との話にも出ないまま、母は亡くなってしまい、もう6年が経とうとしています。
名前もわからないので、今は娘さんの様子を知ることもできません。もしかすると母の同級生も亡くなっているかもしれませんし、お元気だとしてもかなりの年齢ですから、もし娘さんがまだ引きこもっているとしたら、相当心を痛めているでしょう。
弟さんの死が、娘さんの引きこもりの原因になったのかもしれません。私の弟も専門学校を中途退学してから、数年の間引きこもりに近い生活をしていました。2人には目に見えるきっかけがあったようです。
はっきりしたきっかけがない場合も
しかし次女にはこれと言ったきっかけがなかったようです。本人もいろいろと考えたけれど、これというきっかけや理由がないと言います(ある時期から次女の様子が変わり、不審に思った私は何とか原因を探そうとしましたが、結局わかりませんでした)。
きっかけがある引きこもりは、転んで大けがをした人のように思えます。思いの外、けががひどくて動けない状態が引きこもりです。この場合は、けがが治ればまた歩き出すかもしれません。
しかし、きっかけがハッキリしない場合は、自分でも気づかぬうちに軽いけがを何度もしている状態なのかもしれません。最初の何回かは大したことがないと自分でも思っていて、歩みを止めることはありませんが、回数が重なるうちに、ジワジワと効いてきて、動くことができなくなるのではないでしょうか。
いつけがが治って歩き出すことができるのかは、本人にもわからないのでしょう。はっきりとしたきっかけがあっても、無くても、けがが治っても痛みが残って歩けない人がいるのかもしれません。
引きこもりでも幸せに生きる方法があるはず
引きこもりの人のために、家の外に出ないでも、人と関わらないでも生きていける方法があれば良いのに、とも思いますが、それは虫の良い話なのでしょうか。しかし、リモートワークが一般的になったら、それも夢ではないですよね。
引きこもりという言葉がなかった頃から、苦しい思いをしていた先程の娘さんに、話を聞いてみたい気がします。どんなふうに生きてきたのか、今何を考えているのか、そして今幸せかどうか。
引きこもりを治すのではなく、それを受け入れた上で幸せに生きる方法がきっとあると思うのです。
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